(……やってしまった)

 眩しいほどの朝日に照らされ、冷静になったサチは文字通り頭を抱えた。

(何してるのよ、私!)

 頭の中で昨日の自分の肩を掴み思い切り揺さぶってやりたい衝動に駆られる。
 いくら酔っていたとしても、いくら好みのイケメンでも、あの状況から朝チュン状態になるとかありえないだろう。

 ひとしきり後悔に頭を悩ませてからまだ眠る男――トオルを見る。

 昨夜獣のように求めてきた人と同一人物とは思えないほどに可愛らしい寝顔をしていた。

 その寝顔に少しキュン、としてしまってからハッとする。


(駄目駄目! このまま(ほだ)されちゃあ!)

 過ぎたことは仕方がない。
 気持ち良かったのだし、トオルがはじめ言っていた通り一夜の戯れという事にすればいい。

 あとは彼が起きたら今度こそ出て行ってもらおう。
 サチはそう決意し、実行した。


「ええぇ? せめて朝食を一緒に――」
「あなたの分の食材なんてありません」

「じゃあシャワーを――」
「ご自分の家で浴びてください」

「なら名前だけでも教え――」
「教えません!」

 酔いもさめて冷静になったサチは、今度こそ毅然とした態度でトオルを追い出すことに成功した。

 これでもう関わることはないだろう。
 ベランダに居たら上から人が落ちてくるなんてこともそうそうない。
 昨夜のことは、戯れも含めてそのうちただの思い出になるだろう。

 そう、思っていた……。