(ヤバ……カッコイイ……)

 溶けきった理性は役に立たず、サチの中の欲という蠟燭にも火が灯る。
 その火は唇が重なり、腰を撫でられると更に大きくなって……。

「んっ……きもち、いい……」

 吐息と連れ添って、言葉が零れた。


「んっはぁ……俺の名前はトオル。呼んでみて?」
「と、おる?」
「そ。……舌っ足らずになってカワイーね。……なぁ、名前教えてくれよ?」
「……ヤダ」

 別に教えても問題はないのだろうが、何故か意固地になってしまったサチは自分の名を教えるのを拒んだ。
 変なところで頑固になってしまうのも酔っ払い故なのかもしれない。

「分かった、いーよ。言わせてみせるから」

 トオルは機嫌を損ねることもなく、またサチの唇を啄む。
 その目は、獲物に狙いを定める猫科の猛獣のようだった――。