女のために国を捨てる皇帝など、ただの愚帝かと思いきや、なかなかの賢帝なのだから、劉赫という男は面白い。

 宰相も唸るほどの知識と見解を持ち、明豪と互角に渡り合えるほどの剣の腕前もある。

己以外どうでもいい存在と思っていそうなのだが、実は国民や臣下のことを誰よりも気にかけていたりする。

 そんな男が、全てを捨ててひとりの女を求めたのである。

やったことに腹が立つ気持ちもあるが、それほどの覚悟だったのだろうと推察すると、応援したくなる気持ちも湧くのである。

だが、それは己のやった重大な報いを、しっかり自分の手で始末してからである。

「あと数日で完成すると聞きましたよ。劉赫様の仕事も、その頃には終わるんじゃないですかね」

 劉赫は簡牘を読んでいた顔を上げ、無邪気に笑った。

こんな笑顔もするのかと密かに明豪は驚いた。

さて、数日後。

内廷の中心にある宮城に豪奢な寝所が建設された。