臥室を出て行った雪蓉のすぐあとに、内侍監が入ってきた。

 先ほどの劉赫と雪蓉の会話を聞いていたらしい内侍監は、窺うような顔で劉赫を見て、静かに口を開いた。

「本当に宜しいのですか、陛下」

 劉赫は、ふんっと大きく鼻息を吐くと、ドカリと椅子に腰を下ろした。

「仕方がないだろう。アレは言い出したら聞かないからな」

「さようでございますか。陛下があっさりと身を引くとはいささか意外でございました」

「……身を引く? 俺が?」

 劉赫は頬杖をつきながら、ピクリと眉を上げた。

「おや? 違うのですか?」

 内侍監の問いには答えず、劉赫は不敵な笑みを浮かべ、独り言のように呟いた。


「俺から逃げられると思うなよ、雪蓉」