ある木曜日 22時
(………今日こそ送る…送る…?)
香魚子は今日もタブレットとにらめっこをしていた。
デザインは溜まっているが、いざ自分から明石にLIMEを送ろうとすると緊張してしまう。
(明石さん忙しそうなのにこんな時間に?)
(これ見て喜んでくれるの?)
(メッセージはなんて書いたら良い?)
そんなことばかり考えてしまういなかなか送信ボタンが押せない。
そんな時ふと、新入社員の川井の顔が浮かんだ。

『川井さんはデザイン部希望だから…』

つまりデザインの話ができる人物だ。しかもかわいい。そんな人間が明石のペアとしてずっと(そば)について動くことになった。
(デザイン、ここで送らなかったら私の存在なんて忘れられちゃうかも…)
香魚子は意を決して「送信」を押した。
メッセージにはすぐに既読の印がついた。

22時20分
まだ明石からリアクションが無い。
(もしかしてまだ仕事中だった…とか?)

(あ、飲み会とかだったかも!)

(あんまり良くなかった…?)
だんだんと不安になる。

22時35分
スマホの着信音が鳴った。
(え?)
画面には【明石 周】と表示されている。
(えええ!?)
香魚子は手の汗を拭き、唾を飲んで、通話ボタンを押した。