銀太はまじまじと銀杏の実を見つめて口に入れようとしている。


「銀杏は封筒に入れてレンジで加熱して弾けさせるんだ」


「すごいな。詳しいんだな!」


感心しながらも銀杏をガリガリと噛み砕いている。


大丈夫かよ。


と、心配していると校内放送が流れ始めた。


『全校生徒のみなさんに連絡です。本日は集団下校のため、部活動は休みになります。繰り返します。本日は集団下校のため……』


「集団下校?」


僕は眉を寄せてつぶやく。


なにかあったんだろうか?


「今日も部活は休みか。見学したかったのにな」


金子が残念そうにつぶやく。


「そういえば西村は何部なんだ?」


「僕は帰宅部だよ。でも、時々ピアノをひかせてもらってる」


「え!? じゃあ、昨日聞かせてくれたらよかったのに!」


金子が僕の右手を掴んで揺さぶった。


「人に聞かせるほどの腕前じゃないし、ただの趣味だから」