ーコンコン



そう控えめなノックが響く。

その後で,私より3つも年下の青年の,私を呼ぶ声がした。

襖を開けると,もうすぐ沈みきる夕日が見える。



「サム!」

「食事の時間ですよ,凛々彩さん」



そう言う懐かしいトゲトゲ頭のサムは,今回も私の食事係。

人懐っこい笑みに,私は癒された。

こんな子も,人を殺すのよね。

この家の門下に捨てられたサムは,来月で19。

ここで育ち,ずっとここで暮らしている。

立派な組織の一員だ。



「あれ? サム,食事を運んで来たんじゃないの?」

「あ…すみません,今日は……」



別の場所だと言う。



「サムはもう食べた?」

「はい,今日はお腹が空いていたので」

「じゃあ私も後でいいわ。別の場所と言うことは,まだ出来てはないんでしょう? いつもみたいにお話していってよ」



やり直したって,サムとは話し相手のお友達。

ただお互い名乗り合う。

そうして私達は出来上がったのだから。

私がお願いすると,サムは困ったように笑う。



「今日は,その。蘭華さんが…」