「彩羽、予習してきた?」

『…ん?なんの?』

明くる日の学校。

頼人が、ノートを片手に私の席へと
歩いてきた。

頼人とは、色々話すようになった。

私のお気に入りのカフェ“ドルチェ”の
話とか、頼人からは飼っている犬の話とかをやり取りしていた。

うん、予習…?

今まで、一度もした記憶ないけど?

ここにきて、学生の危機か。

「え、数学だよ。
 1限にノート回収されるよ」

今は、ホームルーム前。

『…へぇ』

「いや、絶対してないよね、その顔」

目が泳いだ。

あっちこっち、スイミング。

よし、1限サボろう。

回収とか聞いてない…。

(聞き流していた)

「見る?」

頼人は、逃げようとする私に同情して
自分のノートを差し出してきた。
 
その優しさにより、逃げる気が失せた。

『…いや、いい。

 何ページだっけ』

渋々ノートと教科書を取り出す。

頼人は優しいけど、それではスポイルされ
かねない。