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 田舎娘と謗られ、わざとぶつかられ、鋭く睨まれる――。

 社交界に顔を出すようになったあたしを待っていたのは、きらびやかではありながらお伽噺のような夢のある場所ではなく、張り付けたような微笑みに上辺の会話、自由に食事をすることもままならない息苦しい世界だった。

 何がきっかけとなったのか、王都の歴史ある学園で学んではいるものの、それまでが田舎暮らしだったためにマナーなど至らなさが高貴なご令嬢たちの気分を害してしまったのかもしれない。
 キャンベル家の治めるミーツ領は小さな領地ながらも実り多く、領民もおおらか、のびのび育ったものだから令嬢らしくないことは自覚していた。

 それでもしきたりだと言うなら従うしかない。あたしがこの世界での新入りであることは確かなのだから。馴染めるかはわからないし、馴染むことが正解かもわからないけど、こうした形式が昔から続くものだというなら、そこにはきっと何か理由でもあるに違いない。

 そう思って、自分に言い聞かせて、お友達もなかなか出来ないけど、立派な淑女だと言われるようになれば家族だって喜んでくれるはずなのだからと、それを励みに必死に頑張った。
 理解が難しいことは先生に尋ねに行って、クラスメイトには積極的に声をかけたし、困っている人がいれば手を貸して。もちろんみんながみんなすぐに受け入れてくれたわけではないけど、頑張っていれば見ていてくれる人はいるもので、だんだんと気遣ってくれる優しい人と出会うようになった。