メリッサとの出会いは、第一王女アンナマリア殿下の遊び相手探しの場だった。
お茶会と称されていたと言うけど、主役も招待客も十にもならない幼子たち。貴族とはいってもただの子供でしかなく、大人たちがどう取り繕おうともお茶会らしくはなかったはずだ。
もとよりそれなりに選ばれていた顔ぶれから厳選され次第に減っていく中でお互いが残ったのは、殿下と同い年という点も作用したのだろう。
殿下の友人として大人たちに選ばれた僕たちは、子供だけのお茶会や、大人が催すパーティーの傍らで、他愛ないおしゃべりやカードゲーム、おいかけっこなどをした。
長く平穏が続いている国柄か、他国に比べ王族や貴族であっても割と自由な環境が与えられている。僕たちはのびのびと遊び、育てられたおかげで、幼少期から今に至るまで続く友情を育んだ。
その中でも、気がつけばよく一緒に過ごすようになっていたのがメリッサだった。
当時のことを鮮明に覚えているわけではないけど、つまりはメリッサのことも最初は特に何を思うこともなかったのだろうと思う。
顔を合わせるうちに親しくなり、打ち解け、それを見かけた両家当主の話し合いにより婚約が成立。
親に決められた形にはなるものの、以来お互いに将来の伴侶として認識して過ごした。
メリッサの恥ずかしそうに、だけど穏やかな微笑みが好きだ。向けられると胸がいっぱいになる。蜂蜜のように甘くきらめく髪も、木陰に出来た水溜まりのような青灰色の瞳も、たどたどしくなろうと懸命に思考を言葉にして伝えてくれるところも。
僕はすぐにきみのことが大好きになった。
人見知りだったきみが自分に自信を持てるようになって、凛とした淑女らしくなっていく様は、そばで見ていてなんだかとても誇らしいような気持ちだった。
そうして仕草ひとつ、目線ひとつで思考を推測出来るくらいにはともに過ごし、相手の幸せを自身の幸せとして生きてきた。
だから、メリッサのことなら誰よりも理解していると思っていたし、これから先、より深く知っていきたいと考えていた。
僕だけが知っているきみを、もっと、もっと、と。
――だけど僕は、穏やかな未来に思い馳せるばかりで何も見えていなかった。きみが未来を見失っていたというのに。



