「その話を踏み台に、世間では私と親しくするあなたに嫉妬して凶行に及んだのではと見られていますが、そもそも私があなたと初めて会った時にはメリッサに嫌がらせを受けていると言っていた。あなたの話は時間の流れがおかしい」

 ぽかり、女の口が開き、ゆっくりと、ゆっくりと、瞬く。

「何を言ってるの……? オスカー様があたしに声をかけてくれたから、でもそのせいでいじめられるようになったのよ?」
「話なんて何ひとつ聞かなければよかった。頼る人がいないと泣かれたって放っておけばよかったよ。家に出入りさせたせいで馬鹿な噂の信憑性を増させてしまった」
「オスカー様がお家においでって言ってくれたんじゃない。あたしのことが特別だからって。忘れてしまったの? おかしな人ね」

 ふふ、と笑みをこぼす姿はいかにも純真そうで、嘘ひとつないように見える。
 その一方で様子を窺っていた人々は、言い分こそ変わっていないはずながらその態度の変わりように目を剥いていた。
 おそらくこの場面から見た者がいればその言い分を信じた。しかし叫ぶように声を荒らげていたところからの変化を目の当たりにしたなら、もう誰も純粋無垢な娘と見る者はいないだろう。

「あたしとオスカー様は出会ってから偶然の出会いを繰り返して、そのたびに仲良くなったの。オスカー様はあたしといると楽しいって、優しい子だって言ってくれたわ。男遊びするメリッサ様とは違うって」
「妄想ばかりだな。私はそんなことを言ってはいないし、メリッサは男遊びなどしていない。すべて作られた噂話でしかない」
「オスカー様があたしを可愛がってくださるものだから、あたしはメリッサ様に目をつけられて、いろんな嫌がらせを重ねられた。それを見たオスカー様は、あたしのことを守るって言ってくれて、」

 妄言を重ねる女は、眉間に皺を寄せたルナリアに押さえつけられているというのに、妙にうっとりとした顔で微笑む。

「とーっても嬉しかった」