誓ったはずの、きみへの愛


 あまりにもはっきりと目撃したと断言するものだから、まさかそんな曖昧な状況のみを指していたとは考えもしなかった。

「毒を盛られた件についてもはっきりしたと考えても?」
「はい、殿下。メリッサの部屋から、エリー・キャンベル嬢のティーカップに混入していたものと思われる毒が発見され、購入する姿、署名ともにメリッサに違いないとされていましたが、」

 甘かった。すべては考えの甘かった僕の責任であり罪だ。

「再度念入りに調査したところ、それらも偽装されていたことが判明しました。目撃証言に関してはおそらく、当時すでに彼女に関する悪評が流れていたため、その印象から証言者の記憶が補正されたのではと考えられます。署名についても本物に限りなく似せてはおりましたが、魔導鑑識にかけたところ生命力の残滓が彼女のものではないということでした」

 なるほど、と頷いてみせるアンナマリア殿下に、周囲も戸惑いながら頷き、または首を傾げる。

「嘘よ! 嘘ばっかり! どうして!? あたしのこと守ってくれるって言ったじゃない!」

 エリー・キャンベルはポロポロと涙をこぼして叫ぶ。

「言ってない」

 涙ながらに訴えられても、僕は苛立ちこそすれ心動かされることなどない。

「言ってないよ。僕に出来るなら手助けするというようなことは言ったけど、あなたを守るなんて言葉は一度だって言ったことはない」

 目の前の顔が、ひく、と引き攣る。ようやく現実が見えてきたのだろうか。
 でもそれもすぐに記憶を都合よく改変するはずだ。これまでのように。

「それに関しても、あなたのためではなくメリッサへの疑いが晴れるならとの思いからだった」
「おかしいわオスカー様、どうしちゃったの!? これから二人で幸せになるんでしょう? メリッサ様は死んだんだから!」

 無遠慮に言い募る醜い女に、カッと頭に血が上った。

「そうだ、メリッサは死んだ! お前が!!」

 込み上げる激情に押し流されまいと奥歯を噛み締める。乱れる呼吸をも噛み殺し、こぶしを握って溢れ出ようとするものを堪える。

「……っ、お前と僕が殺した……」