「二年ほど前、婚約者だったメリッサ・シルドに嫌がらせを受けているから助けてほしいと接触してきたのが、そちらのエリー・キャンベル嬢でした」
僕は静かに彼女を見据えた。
「この中にも現場に居合わせた方もおられるかと思いますが、彼女はパーティーでは飲み物をかけられ、茶会で毒を盛られかけ、さらには階段から突き落されました。すべてメリッサの手によるものです」
何度も震えて泣きだしそうなエリー・キャンベルを見てきた。その一方で、同じくらい、それよりもっと顔色を失ったようなメリッサも見てきた。
「そう彼女は主張し、確かにそのそばには必ずメリッサがいた。だけど決定的瞬間を目撃したことは一度だってないのです」
ずっと引っかかっていたことだった。だからメリッサが本当にそんなことをしたのか、彼女の証言は正しいのか、疑っていた。
「だけど見たと言う者もいたんでしょう? だからメリッサ嬢は謹慎処分となった」
「そうです。しかしながら今一度問いたい、あなたが目撃したのはメリッサがそうする場面だったのか、エリー・キャンベル嬢が悲鳴を上げ被害を訴えている場面だけではなかったのか」
目撃証言が増え、メリッサ自身からも明確な話を聞けず、僕は流されるようにそれを受け入れざるを得なくなった。
それでもしっかり信じて、諦めずに、何を話してくれなくともそばに居続ければ……メリッサは死なずに済んだのかもしれない。
「ひどい! どうしてそんなこと言うんですか、オスカー様!?」
ルナリアに拘束されながらも涙ながらに声を上げるエリー・キャンベルに、暗い気持ちが噴き出しそうになる。ただでさえ彼女のしてきたことを考え、気持ちが昂って暴力でも振るいそうになっているというのに。
落ち着け。落ち着け。
浅くなる呼吸を、意識してゆっくりと、深くする。
アンナマリア殿下の視線を受けたルナリアが腕に力を込めたようで、エリー・キャンベルは呻いて口を閉ざす。
周囲からはヒソヒソと、低く話し声がさざなみのように広がっていく。
「私はドレスが飲み物で汚れた姿を見ました。階段から落ちるところを抱き留めました。だけどメリッサがグラスを手にするところも突き飛ばすところも見ていない。メリッサの仕業であることは確かだと言い切る人もいました、改めて問いかければその人でさえも決定的な瞬間は見ていないようでした」



