誓ったはずの、きみへの愛


 あたしとオスカー様が付き合っていることはなんとなく察している人も多いと思うけど、元婚約者が亡くなってまだそう経っていないのに浮かれるのはいけないことと思われるかな?

「前々からの約束で、デートの予定だったから」

 そう、だからタイミングが悪いのはたまたま。あたしを公の場で正式にエスコートしたいって言ってくれたから。それに見合うような装いが必要だったんだもの。

「……お噂の彼と?」
「まあ……それは楽しみですわね」
「噂だなんて、どんな噂かしら、恥ずかしいわ。でもほんとにずっと楽しみにしていたのよ」

 予想はしていたのか、驚くでもなく二人は声をひそめ、その分だけそっと顔を寄せた。今もあたしを変な目で見ている人がいるみたいだから、その気遣いがありがたい。
 きっと噂もいろんなものがあるに違いない。でも負けないわ、あたしにはこうして味方がいるんだから。

「ジェイミーさんとビビアンさんもご婚約者さんがいるのよね?」
「わたくしたちはお昼の間に出掛けてきましたの。ね、ジェイミー」
「学生のうちは日中にお会いするのが定番ですもの」

 定番を外して夜デートなあたしを、二人は羨ましそうに見る。
 照れくさくなって笑っていると、玄関から入ってきたばかりのナターシャさんが通りかかった。休日だというのに制服の、いつも通りの格好だ。

「ナターシャさん、今お帰り? お手伝い出来なくてごめんなさいね」
「ありがとう。ビビアンさんはご予定があったのだから気にしないで」
「先生方も先輩たちもあなたに頼り過ぎではないかしら」
「予定もないから自分で買って出たのよ。でもありがとう、ジェイミーさん」

 微笑むナターシャさんは、さすが学年代表だけあって頼りにされている。こんな日にも誰かのお手伝いを頼まれていたなんて。

「あれこれやらされてナターシャさんったら可哀想。そういうのは断った方がいいわ」
「無理な時はきちんとお断りしますから。お気遣いなく」
「ナターシャさんは意外とそういうことが苦手だものね。何かあったらあたしが言ってあげるからねっ」
「……お優しいですね」
「そりゃあお友達のためですもの!」

 力強く請け負ってあげれば、ナターシャさんはいつものようにそっと笑う。普段誰よりしっかり者だからこそ、こういう時はお互い様よね。
 それより、とナターシャさんが言う。

「キャンベルさんは今からお出掛けですか?」

 あたしはにっこり笑顔で頷く。

「そうなの、お城の夜会に招待されてて。まだちょっと早いけど遅れるよりはいいでしょう?」

 楽しみでたまらない気分があふれてその場でくるりと回ったあたしの姿に、ナターシャさんが目を細めた。通りすがりの寮生がこちらを見てくるのを感じたけど、それすらも気持ちを高揚させてくれる。

「楽しんできてくださいね」