学園でもちょっとしたパーティーがあって、貴族生徒たちの親から送られてきた領地の特産物をふんだんに使用した料理がメインになる。庶民生徒は昼間に実家を手伝ったりすることもあるみたいだけど、生徒たちは大体友達と街に繰り出して、でも夜はごちそうを食べに戻ることが一般的のよう。
あたしも王都に出てきてからは、一人だったり、誰かとだったり、街に出歩いて露店を冷やかしから学園のパーティーに参加するのが去年までの流れになっていた。
オスカー様との約束は夜会、お城で開かれるパーティーの会場で。
お城はもちろん招待客でなければ入ることは出来ない。学生での参加なんて、それこそ年上の婚約者の同伴でもなければ無理な話。つまり……と考えて顔がゆるむ。
待ち合わせが会場ということだからエスコートはお会いして以降ということになるのが残念だけど、エスコートされながらのパーティー入場はこれから先に取っておこうということね。なんといっても婚約者なんだもの。
「ああでも何を着ればいいのかしら」
クローゼットの中を引っくり返す。入っているのは制服と、ワンピースとドレスが数着。
貴族の娘といっても、今時は王都のご令嬢もワンピースを普段着にしていることが多いみたいで、あたしも領地では基本的にワンピースだったから、どちらかと考えるまでもなく手持ちはドレスよりワンピースの方が多い。
パーティーでエスコートしてくださるならデザインを揃えたドレスを殿方から贈るものだと聞くのに、オスカー様ったら。そんなうっかりしたところも可愛いから許してあげるわ。
「せっかくならデートしてから夜会に行きたかったけど、仕方ないわね」
学園の行事やドレス指定の授業では、いつもは学園からレンタルしていた。寄贈されたりチャリティーバザーの売れ残りだったりするらしいけど、どれも綺麗なもので、授業用には大半の子がレンタルを利用していると思う。
だけど、今回ばっかりは新しく仕立てないといけない。なんといってもオスカー様直々のお誘いで、しかも『大切な話があります』と言うのだから。
デザインはともかく色くらいは合わせたいけど、彼が何色を着るのかがわからない。となると、やっぱりここは緑かしら。オスカー様の瞳の色。光を受けてキラキラきらめく葉っぱのような。
フリルで華やかにして、刺繍はお金はもちろん時間もかかるから諦めるけど、精一杯お姫様みたいなドレスにしたい。
父様におねだりしなくちゃ。愛娘が幸せになるんだもの、一着くらいどうにかしてくれるはずよ。
当日を待ち遠しく思い馳せて、笑みがこぼれてしまう。気持ちのまま、衣類の散らばったベッドに飛び乗って転がった。
「ふふっ」
人生最良の日になりそうだわ!



