「――愛を誓いますか?」


 神官の定型的な台詞に、顔を上げる。
 頭上から光の降り注ぐ教会、背後にはあたたかな眼差しで祝福する家族、友人たち。そして、隣には愛しいきみ。

 長い道のりだったようにも、案外あっという間だったようにも思える。
 目の前でとろけるような微笑みを浮かべるきみの姿に、僕は胸いっぱいになって、答えるべき言葉を詰まらせる。

 オスカー様?
 と、不思議そうに、不安そうに、名前を呼ぶきみを安心させなければならないのに。
 愛を誓いますか、はい、だなんて形式的なやり取りではこの気持ちを伝えられないのは明らかで、でもそう答えるしかないのも確かで、僕は静かに深く呼吸をして、すぐそばにある華奢な手をそっと取って指を絡めた。

 遠回りしてしまったけど、傷つけてしまったけど。
 泣かせた分だけ、それ以上に、きみを笑わせたい。幸せにしたい。

 僕のせいでつらい目に遭わせた過去は変えられない。
 それなのに僕を選んでくれたきみ。

 ああ、もっとこの想いを伝えるに相応しい言葉があればいいのに。

 魔導の力でそっと吹き上げられた祝福の風に、色とりどりの花びらが僕たちへと舞い落ちる。
 光と花びらに彩られたきみは、より一層美しい。


「きみを、愛してる」


 二人で、幸せになりたい。
 僕はきみの隣で生きていきたい。