【Blue&Devil】は60年の歴史あるジャズバーで、このバーから沢山の伝説やスターも生まれ、ステージに立つ事はジャズミュージシャンだったら誰でも憧れるらしい。

「ここは夢の舞台なんだよ」

教育係の宮本さんが最後にそう結んだ。
目をキラキラとさせる姿が少しナルシストっぽいけど、言葉の端々にはこの店への愛情が溢れている。

夢の舞台か。

青い照明に照らされた店内を眺める。
今夜もステージではジャズミュージシャンが演奏をしていた。
しっとりとしたナンバーが続き、大人の雰囲気に包まれている。

ステージ前のテーブル席のお客さんも、両サイドのボックス席のお客さんも、そして目の前のカウンター席のお客さんも、視線はステージに向いてて、楽しそう。

ここは大人が真剣に音楽を楽しむ場所なんだ。

美香ちゃんも【Blue&Devil】でピアノを弾く事になったと嬉しそうに言ってた。

その時はわからなかったけど、ジャズピアニストとして、とても名誉ある事だったんだ。

「オーナーのおかげでこの店は救われたんだよ」
宮本さんが付け加えるように言った。

黒須のおかげ……?
どういう事?