「僕に浮気の濡れ衣を着せたのはロペス捜査官だったんだよ。立花家の人間を事件に巻き込まないように配慮した結果、そうしたそうだ。僕はこの五年、マイクロチップを美香から奪った容疑者として追われていたからね」

初めて知る事実だった。

「じゃあ、おばあちゃんの所に来たのは本当にFBIの人だったんだ」
「その通り」

黒須がにんまりと笑った。

「電話したら、おばあちゃんの方から会いたいと言ってくれてね」

「おばあちゃんに電話したの?」

「うん。それで美香が亡くなってからのお互いの心の中にあったわだかまりは何とか解消されたよ。美香の墓参りに僕が来ていた事はわかっていたと言っていた。これからも遠慮せずお参りして欲しいって言ってくれたんだ」

「そうなんだ……」
「春音の事もどうしているか心配していたよ。だから今日、連れて行きますって言っておいたよ」
「その話、私、全然聞いてないよ」
「春音は意地っ張りだから、前もって言っておくと行かないって逃げるだろ?勘当されたんだから会う訳には行かないって言い張ってさ」

確かにそうかも。

「でも、いきなりなんて、心の準備できてないよ」
「心の準備なんていらないよ。春音を育ててくれた人に会うんだから。いつも通りにしていればいいよ」

いつも通りって言われても困る。どんな顔したらいいんだろう。

気まずいな。