大嫌いの先にあるもの

「いますよ。目の中に入れても痛くない程、可愛い人が」

黒須がクスクスと笑った。

目の中に入れても痛くないって……。ぼっと顔が熱くなった。
どうしよう。また恥ずかしくて黒須の方が見れない。
今のは冗談だよね？私たちをからかっているんだよね？

若菜とゆかの方を見ると驚いたように目を丸くしている。
どう思ったんだろう？

「うわっ、先生からそんな言葉が出るとは思わなかった。溺愛していますね」

ゆかが驚いたままの表情で言った。

「その恋人は年下って事ですか？」

若菜がすかさず質問する。

「それもご想像にお任せします」

黒須が楽しそうに笑った。

もう恥ずかしい。この場から消えたい。

「君たちはどうなんですか？好きな方はいますか？」

黒須、今度は何を言い出すの？

「ゆかは彼氏いるんですよ。もうラブラブでこの夏休みに同棲を始めたそうです」

若菜が答えた。

ゆか同棲始めたんだ。知らなかった。

「同棲ですか。楽しそうですね」
「先生は恋人と一緒に暮らしているんですか？」

ゆかが興味深そうに黒須を見た。

「一ヶ月程、一緒に暮らした事はあるのですが、出て行かれてしまって」

黒須が苦笑を浮かべた。

「えー、出て行ったんですか？それって別れたという事ですか？」

若菜が率直な質問をぶつける。

「いえ、いろいろとありましたが気持ちを確認し合い、今はお付き合いをしています」

お付き合いって言葉に耳が熱い。
黒須、どこまで話す気なの？もう勘弁して。

もしかして昨日、お見合いに行った事に対しての仕返し？それとも、キスだけでギブアップした事に対しての罰？

そっと黒須の方に視線を向けると目が合い、意地悪く微笑んだ。

そして……

「君は好きな人、いるんですか？」

私に向かってしらじらしい質問をして来た。
やっぱり昨日の事でまだ怒っているんだ。だから困るような事ばっかり言ってくるのね。黒須のいじわる。