「おばあちゃん、また来たの?」

「春音がどこに住んでいるのか知らないからね。ここに来るしかないだろ」

昨日よりもさらに怒っていそう。
Blue&Devilでも揉めたままだったし。

「一晩、考える時間はあげたよ。答えを聞かせてもらおうか」

「今バイト中なんだけど」

おばあちゃんの後ろに、DVDを持ったお客さんが5人並んでいる。
話している間に列が出来てしまった。

「そう言ってまた逃げるのかい?」

「おばあちゃん……」

「春音ちゃん、休憩行って来たら?」

滝本さんが私たちの様子に気づいてレジカウンターに入って来てくれた。

「すみません」

そう言うしかなかった。

おばあちゃんを連れ出さなきゃ。

おばあちゃんの腕を掴んで出入口に向かった。

「お待ちのお客様、どうぞ」

歩きながらテキパキとレジをさばいていく滝本さんの声が聞えた。
本当に申し訳ない。忙しい滝本さんの仕事を増やしてしまって。

おばあちゃんのせいだ。

バイト先でこんな恥をかかせないで欲しい。
こっちは生活かかってるんだから。クビになったら困る。

もしかしてバイトを辞めさせる為にしてる?
そうすれば実家に帰ってくるしかないもんね。

昔からおばあちゃんって自分の意見押し通すんだよね。
同じ意見でいる時はいいけど、違ったら大変だった。

いつも私が折れるしかなかった。
おばあちゃんが折れた事なんて一度もない。

でも、今回は絶対に折れない。自分の考えを押し通す。
だって私、もう子どもじゃないもん。

「またここかい?」

昨日と同じファミレスに入るとおばあちゃんが言った。