【完全版】妹が吸血鬼の花嫁になりました。

 だから家で大人しく待っていてくれと彼は言う。

 分かってる。

 本当は俊君の言う通りにした方がいいのは、ちゃんと分かっている。


 でも理性と感情は別物で、どんなに大人しくしていた方がいいと分かっていても、心配で不安で落ち着かない。

 きっと家に帰っても、待ち切れなくて飛び出して行ってしまいそうだ。

 でも足手まといになるだけだってのも分かってる。


「分かってる、分かってるけど……。あーもー! どうしたらいいのよ!!」

 理性と感情がせめぎ合い、そのジレンマを吐き出すように思い切り叫んだ。



「おおっと、ビックリした。香月、何してんの?」

 すると、思いもしない第三者の声が後ろから聞こえた。


「へ?……って忍野君?」

 予想も出来ない人物の登場に、私は間抜けな声を出してしまう。


 何でこんな所に忍野君が?
 学校終わってないよね?
 サボり?


 何度か瞬きをしながら、私は固まっていた。

「俺今日これから歯医者でさ。何? お前らも早退?」

「あ、うん」

 忍野君がいる理由が分かって、微妙に混乱していた頭が正常に戻る。


 そっか、歯医者で早退ね。そういう事もあるよね。
 サボり? とかすぐに考えてしまったのは失礼だったかも。


 内心苦笑いしつつ、それはバレてないから良いだろうと結論付けた。