その瞬間、私は《全て》を理解した。


 太陽の残滓である光が空から消え、完全なる夜となったその瞬間。

 上昇の月で力が溢れてきた、その瞬間。


 溢れる力と共に、私の中に溶け込んだ始祖の力が一緒に湧き上がってきた。


 不完全な始祖の再来。

 それは不死の力を欠いたもの。

 不死ではない肉体で、常に始祖の力を扱うには負担があった。


 だから、上昇の月の夜。

 心身ともに力がみなぎるその夜にのみ始祖の力を扱えるようになるんだと。


 湧き上がる力の奔流の中、それを知った。


 だから、今このとき。

 この新月の夜だけは、確かに私は始祖の再来と言える存在になっていた。



「なっ……」
「これは……そんな……」

 私の言葉に固まった目の前の二人は、現実を受け止めきれないのか動揺を見せるばかり。

 そんな彼らに、私はもう一度言葉を放つ。


「下がりなさい、無礼者!」

「っ! ははっ!」

 それだけで目の前の二人と伊織はひざまずきこうべを垂れた。


「……」

 若干、口調が偉そうになっているのはなんでだろうと自問する。

 始祖の力に口調も引きずられているのかも知れない。

 そのうちその辺りも調和して元に戻ると思うけれど……。


「……聖良?」

 大切な人の戸惑う声が聞こえる。