つまり、そのはとこを守るために逃げられないと言っているんだろうか?


「確か彼は君と同じ年だったかな……。彼が逃れても、また別の者が担ぎ上げられる。……だから、誰かがやらなければならないんだ」

「……」

 そうか……彼が守ろうとしているのは月原家そのものではなく、月原家の犠牲になる一族の若者たちということだ。

 確かに、優しい人だ。

 彼の守ろうとしている人の中には面識のない相手もいるだろうに、その人達まで守ろうとしている。

 シェリーの言葉に少し納得がいった。


 ……でも、だからと言って思い通りになってあげられるわけがない。

「……だからって、他に方法はなかったの?」

 怒りで全身が熱くなりながら、伊織を睨む。


「何?」

「逃げられないのは分かった。その中で“唯一”と共にあるためにあがいているってことも」

 でも、だからって私が利用されてあげる義理はない!

「でも、一族の者以外ならどんな目に遭っても良いと言うの? こんなことをして、あなた達が本当に幸せになれるとは思えない!」

 事実、シェリーも伊織も辛そうだ。

 消去法だったとしても、この方法がその中で最良だとは思えない。

 他に方法があるんじゃないかって、どうしても思ってしまう。


「くっ……」

 私の勢いに、僅かに伊織はたじろぐ。