そして私に用意されてたのは……振袖だった。


 唐紅(からくれない)色を基調としたもので、様々な花が金縁で描かれていて豪奢だ。

 裾の方は黒地になっていて、重厚感もある。

 着こなせるのか不安はあるけれど、振袖自体は綺麗だし悪くない。


 ただ……。


「……なんで振袖?」

 という疑問が湧く。


 吸血鬼とかヴァンパイアって言うと西洋のイメージがあるから、こういうパーティーとかはドレスが基本だと思っていた。

 実際愛良はドレスだし。


「あー……それは上からの指示でね……」

 私の呟きを聞き取った田神先生が気まずそうに答える。


「今回は始祖のお披露目ということになっただろう?」

「……完全な始祖ってわけじゃないですけどね」

 一応そこは突っ込んでおく。


「まあ、それはそうなんだが……でも完全な始祖が復活しないのは確実なんだ。そうなると始祖の再来と言っても差し支えない状態だ」

「……」

 言いたいことは分かるけれど、本当の始祖とは言えないんだからやっぱり違うと思う。

 不満顔で黙る私に苦笑しながら、田神先生は話を続けた。


「とにかく、いつもと違って特殊な状態だということだ。そのため海外の有力者達も大勢参加表明してね……」

 そこで一度言葉を切った田神先生はまた気まずげな表情になる。