「ったく、人が我慢してやってんのに煽んなよ……」

 ギュウッとまた抱きしめられ、「可愛すぎ」と耳元で囁きが聞こえた。


 そんな彼の様子に、私はまた嬉しくて胸がキュウキュウと締め付けられるんだ。

 こんなにも好きになれる相手に出会えたことに感謝したくなる。


 思い返してみれば、出会いは最悪。

 好きになるどころか、拒絶していたっていうのに……。


 でも、永人の強い求めはずっと私が欲しかったものだった。

 それに気づいてしまってからは、もう止まらない。


 好きの気持ちを込めて私も永人に強く抱きつく。

 人目なんて、すでに気にしなくなってしまっていた。


 また、頬や瞼にと触れるだけの優しいキスが落とされる。

 それを受け入れて、永人の胸に私は頬を擦り寄せた。



 そうやってじゃれあっていたから少し遅くなってしまって、結局お父さんには心配かけてしまったけれど……。

 まあ、仕方ないよね。