【完全版】妹が吸血鬼の花嫁になりました。

「ダメだよ、お父さんが心配しちゃう。何だかショック受けさせちゃったし、これ以上は心配かけたくない」

「お前、どれだけ俺を焦らせば気ぃ済むんだよ……」

 たっぷり呆れを含ませた不満声。

 でも、怒りみたいなものは感じない。


 なんだかんだ言ってちゃんと私の意志を尊重してくれてる。

 強引そうに見えて、私の思いを優先してくれる永人にキュウッと胸が温かく締まった。


「二人きりでベッドもあるけど時間がねぇってか?ったく、時間の確保も必要なのかよ」

 文句を言いながらも今日は諦めてくれた永人。

 そんな彼と繋がっている手に、私から指を絡めてみる。

「……聖良?」

「ごめんね……ありがとう……好き」

 私の思いを尊重してくれた永人が嬉しかったから……。

 だから、ちょっとだけ素直になってみた。


 気持ちが溢れてしまっているときは自然と出る言葉なのに、普段口にしようとするとこんなにも勇気がいる。


 永人が私を求めてくれるのと同じくらいのものを返したい。

 私を思いやってくれている分、その気持ちに応えたい。


 そう思うのに、“好き”の言葉を口にするのは勢いか勇気が必要で……。

 ままならないなぁって思った。

 でも、永人はそんな私でも――ううん、そんな私が良いと言ってくれる。