【完全版】妹が吸血鬼の花嫁になりました。

 グイッと引き寄せられて、分厚いコート越しだけれど体が密着した。


 耳元に、彼の唇が寄せられる。


「言わねぇなら、ここも舐めてやろうか?」

「っ⁉」

 このっ、私が耳弱いの知ってて!

 振りほどいて、ハッキリやめなさいと“命令”してやりたいと思った。

 でも、出来るはずのそれを私は出来ない。


 指を絡められて、食べられて。

 腰を抱かれて近付いた永人の体温に早くなった鼓動が戻らない。

 高鳴る胸は、結局のところ永人を求めているんだ。


 出来るけど、振り払えない。

 だから、諦めるしかないんだ。


「っ……! 会い、たかったよ。永人が来てくれて、嬉しかった……」

 蚊の鳴くような小さな声で伝える。


 ここまでされてやっと言えるような言葉。

 だと言うのに、恥ずかしくてしっかり伝えることすら出来ない。


 ああもう、情けない……。


 それでも永人はちゃんと聞きとってくれていた。

「ああ、俺も会いたかったぜ……聖良」

 私の小さな声を受け取ってくれた永人は、そのまま優しく耳のふちにキスを落とす。

「んっ」


 こめかみや目じり、おでこに頬。

 触れるだけの優しいキスが、言えたご褒美のように降って来て……。


 甘すぎる様子に今度はまた別の意味で恥ずかしくなった。