【完全版】妹が吸血鬼の花嫁になりました。

 チュッと、わざとらしくリップ音を立てて、また吐息がかかる。

「いいだろ? たまには素直な言葉も聞いてみてぇんだよ」

 甘えるような物言いに少し驚いていると、今度は指を唇だけで()んできた。

「ふひゃっ⁉」

「ほら、言ってみろよ」


 生温かく柔らかい唇に挟まれた指がものすごく熱くなっている気がする。

 触れる唇は優しいのに、そのまま食べられてしまうんじゃないかと思えてきた。

「えっと、永人? ここは人目もあるし、そういうことは……」

 同じく初詣をするためなのか、ちらほらと歩く人達がいる。

 とはいえそこまで多いわけではないし、吸血鬼でもない普通の人間がこの暗さで何をしているかなんて見えるわけがない。

 変な声でも出さない限り分からないと思う。


 でも、その変な声を出してしまいそうな状況なので永人を止めることにした。

「永人、本当にやめ――」

 ペロッ

「っっっ⁉」

 “命令”しようとしたところで、温かく湿ったものに舐められる。

 声にならない悲鳴を上げて、楽しそうに妖しく笑う永人を見た。


「ひと言会いたかったって言ってくれればいいだけだぜ? ほら、聖良?」

 うながされたけれど、今度は羞恥で喉が引きつって言葉が出てこない。

 そうしている間に永人の空いている方の手が私の腰を抱く。