何とか中和剤のようなものを作れないかと、聞いた薬草名を思い出す。

 全ての材料を聞いたわけじゃあないし、分量にいたっては全く聞いていない。
 だから完全に中和できるとは思えないが……。


 チン、と音が鳴り自室がある階についた。

 エレベーターを降りながらも考え続けるが、一つ問題があることに気付く。


「……薬草名思い出しても、それらを中和するのがどういった成分なのか分かんねぇじゃねぇか」

 俺にはハーブ系の知識なんてねぇからな。


 これはお手上げか?
 別の方法で守ることを考えた方がいいか?

 いや、でも身動き取れなくなるのが一番困るしなぁ……。


 何とかできないものかと考え続け、部屋の鍵を開けたところだった。

「お? 岸、今帰りか?」

「げっ」

 元々面倒だと思っていた相手だったが、ここ最近絡まれたせいで確実に苦手な相手になった鬼塚に声を掛けられてしまう。


「『げっ』はないだろう? 勉強とか手伝ってやってんのに」

「……別に、手伝ってくれとは言ってない」

 このまま絡まれるのは面倒だった俺は、さっさと部屋に入ろうとドアを開ける。

 だが、中に入る前に肩を組まれてしまった。


「とか言っておいて都合のいい時だけは俺を使うよな?」
「……」

 それはあえてスルーした。