私の質問に何故か目を泳がせる愛良。
 言葉も歯切れが悪い。


「何? やっぱり何か怖い目にあったの?」

 愛良の様子は何かを隠している様にも見える。

「え!?」

 ビクッと肩を震わせ驚くのを見て、私はやっぱりと確信した。


「怖い事、あったのね? 何があったの? 教えて?」

「いや、怖い事って言うか……。まあ、ある意味怖かったけど……」

 続けた言葉も歯切れが悪い。
 私は黙って愛良を見る事で先を促した。

 すると観念したかの様て、困った笑みを浮かべて話してくれる。


「まず結論から言うと、つけられた事自体は怖く無かったんだよ? 石井先輩がそう言っただけで、あたしは気付かなかったから」

 ふむふむと頷きながら、なら何が怖かったの? と疑問を浮かべる。


「その後俊先輩に電話したと思ったら、突然お姫様抱っこされてしっかり掴まってろとか言われて……」

「ふむふ……え?」

「そこからが怖かったの。人一人抱き抱えてるとは思えない速さで走るし、橋の上から河原に飛び降りたりするし」

 と他にも色々危険なルートを走ったらしい。

 私はもう開いた口が塞がらない。


「もう本当、何度も気絶しそうになったよ」

 そう締めくくった愛良。


「……大変だったね……」

 私は言葉を探して、結局それしか言えなかった。