【完全版】妹が吸血鬼の花嫁になりました。

 クッと喉で笑った永人は、嬉しそうに切れ長な目を細めた。

「そうやって余裕なくなったときの顔マジで可愛いわ……。それに加えて、今夜のお前は綺麗だよ」

「っ!」

 また、綺麗だと言ってくれた。


 ドキッと大きく心臓が跳ねて、恥ずかしさと喜びが同時に湧いてくる。

 永人の親指の腹がこめかみを撫で、その行為自体が私を可愛いと……綺麗だと言っているようで……。


 加速する心音。
 抱き合うことで同じ温度になった体温。
 私に触れる、永人の手。


 そのすべてに、理性が崩壊する。


「なが、と……」

 何か言いたいのに、いっぱいいっぱいでどう言葉にすればいいのか分からない。

 でも、永人はそれだけで読み取ってくれた。


「何も言わなくていいぜ? そのまま、俺に溺れてろ」

「んっ」

 塞がれた唇は深く、深く。

 どこまでも私を翻弄するキスは、私のすべてを奪うかの様。


 でもそれでもいい。

 奪って欲しい。


 自分が誰かにそんな風に思うときがくるなんて。

 少し前だったら信じられなかっただろうな。


 最後にそんな考えが頭を過ぎって、後はもう彼の唇や手にしか意識が向けられなくなる。

 外の風は冷たいのに、私達は溶け合うようにキスを交わした。

***