【完全版】妹が吸血鬼の花嫁になりました。

 とは言ってもすぐに立て直せる程度だったから安心したんだけれど……。


 ミシミシ……バキッ


「え?」

 木の枝の方が、二人分の体重を支え切れなかったみたいで折れた。

「っっっ⁉」

 落ちる恐怖に息を詰める。


 なんで私、この可能性を考えなかったの⁉

 てっぺんの木の枝が細いのは当然だし、こうなることくらいちょっと考えれば分かることだったのにー!


 落下の感覚に体を強張らせて永人にしがみつく。

 でも、その落下は思ったより長くはなかった。


「よっと」

 永人が何度か掛け声を口にすると、今度はもっと太くしっかりした枝に足を乗せる。


「あ……」

「怖かったのかぁ? でもこれくらい予測してるっての。大丈夫だっつっただろ?」

「う、むうぅ……!」


 落ちなくてよかったし、ちゃんと永人がしっかり抱きしめて太い木の枝に移動してくれたから安心した。

 でも、予測していなかった私はちょっと悔しくて唇を尖らせてうなる。

 そんな私のこめかみ辺りを永人の大きな手が撫でて掴み、そのまま噛むようなキスをされた。


「んっ」

 柔らかい舌と、硬い歯の感触。

 浅いキスなのに、もうそれだけで溶かされてしまう気がした。


 最後にペロッと唇を舐めて離れた永人は、意地の悪い嬉しそうな顔をする。