【完全版】妹が吸血鬼の花嫁になりました。

 なんて考える私に、永人は当然のようにとんでもないことを口にする。

「このまま、こっちに跳んでこいよ」

「ええ⁉」

 出来るわけない!

 そう思う私に、彼は「大丈夫だ」と笑う。

「お前は吸血鬼になったんだぜ? それに今夜は上昇の月だ。身体能力もいつも以上に上がってるはずだ」

「それは、そうかも知れないけど……」

 ここは八階。

 そして窓から永人のいる高木まで大体3、4メートルはある。


「良いから、練習だと思って跳んでみろよ。……ちゃんと受け止めるからよぉ」

 重ねられる誘いに引き寄せられる。

 その強い引力に、私はためらいを捨てた。


「……分かった。ちょっと待って」


 いくら何でもスリッパで外に行くわけにいかない。

 外靴を持ってきて部屋の中があまり汚れない様に履くと、窓枠に足を掛け身を乗り出す。

 下を見たら怖くなってしまうかもしれないから、真っ直ぐ永人だけを見た。


「行くよ」
「ああ、来い」

 意を決して足に力を入れる。

 そして、跳んだ。


 永人だけを見て、永人のそばに行く。
 それだけを考えて。

 そのおかげか、ちゃんと永人の胸の中に飛び込むようにそばに行けた。

 ただ。


「おっと! ちょっと勢い良すぎたな?」

 受け止めた永人が少しバランスを崩す。