【完全版】妹が吸血鬼の花嫁になりました。

「俺がそっちに行ってもいいけどよぉ……。今お前の部屋に入ったら、多分我慢きかねぇから」

「っ!」

 何の我慢か、なんて……聞かなくても分かってしまう。

 今の私自身、永人を求めているから。

 永人も同じだというなら、きっとそういうことだろう。


 ……来ても良いのに。


 と、一瞬思いかけてハッとする。


 ダメ! ダメに決まってるでしょう⁉

 もう少ししたら愛良が部屋に戻ってきちゃうし。

 そこまで壁は薄くないけど、私の他に誰かがいるってことくらいは気付かれてしまう。


 愛良が聞き耳を立てるなんてはしたないマネするわけがないけれど、聞かれる可能性がある時点で絶対ダメだ。

 第一、女子寮に男が入る時点で規約違反だし……。


 永人はそんな私の思いを考慮してくれたんだろう。

 だからこっちに来ると言わない。


「だからよぉ聖良。お前がこっちに来いよ」

 だから、月のない夜の中へ妖しく誘う。

 そして彼のそばに行きたいと思っている私は、その(いざな)いを断ることなんて出来なかった。


「うん……でも、どうやって行けばいいの?」

 一階に下りて外に出ようにも、寮の出入り口はもう鍵が掛けられていたはず。

 バレないように外に出るにはどうすれば……。