【完全版】妹が吸血鬼の花嫁になりました。

 だから、私は待つことしか出来なかった。

 田神先生が自分で落としどころを見つけてくれるのを。


「確かにそれはあったかも知れない。だがそのことを聖良が気にする必要はないんだ。“唯一”を求めるのは吸血鬼としての本能。それが分かっているから、本来ならどんなに認められなくても身を引くのが吸血鬼だ。……俊や将成のように」

 確かに、俊君や浪岡君は身を引いてくれた。

 すぐには納得出来なかったみたいだけれど、ちゃんと自分達で気持ちの整理をつけて認めてくれた。


「だが、俺はそれが出来なかった。本能であるはずなのに、認められなかった。……それは、俺が本気で聖良のことを好きだからだと思っていたんだが……」

 そこで一度言葉を切った田神先生は、自責の念に駆られる様な悔しげな表情をした。

「朔夜様に言われた、吸血鬼から“唯一”を引き離す行為がまともなわけがない。そんなことを(くわだ)てるのは、いつも権力者のくだらない思惑だという言葉。あの言葉に、衝撃を受けた……」

 そういえば、あの言葉のあと田神先生は黙り込んでしまったっけ。

 何か思うところがあったのかな?


「その後にも考えさせられることがあってな……俺は、聖良が好きだから認められないんだと思い込もうとしていただけだと……気付いた」

「え?」