【完全版】妹が吸血鬼の花嫁になりました。

 流石に申し訳なくてそう言うと、部屋を出る前にグッと黙った永人は恨めし気に告げた。


「……後で、覚えてろよ?」

 その言葉にゾクリとしつつ、彼の姿が見えなくなったことを確認する。


「とりあえず、これで大丈夫かな……?」

「……うん。私達も一応ドアの外で待機しておくね? 何かあったら叫んで、お姉ちゃん」

「うん、ありがとう」

 愛良もそう言って、零士を連れてドアの外に出て行った。


 ふぅ、と息を吐き田神先生に向き直る。

 これで、彼の要望通り二人きりになった。


 田神先生は以前のように、私を非難するような目で見てはいない。

 二人きりという状況になっても、落ち着いている様に見える。

「聖良……まず、もう一度言おう。……今まですまなかった。君は自分の気持ちに正直になって思いを貫いただけだというのに、俺はそれを責め立てるようなことしかしてこなかった……」

「でもそれは……私の方にも非はあったと思いますし……」

 思わせぶりなことをしておいて、他の男を選んだようなものだった。


 私が田神先生の立場だったら、やっぱりすぐには納得できないし、相手を責めたくもなると思う。

 ただ、だからといって互いに想い合っている人達を引き離すなんて出来ないから、自分で気持ちに決着をつけるしかない。