「でも、本当の“花嫁”だったら血を入れられなかったみたいだし……入れる事が出来なかったら、私はあのとき死んでただろうし……」

 フォローってわけではないけれど、忍野君がそこまで気にしなくても良いんじゃないかと思ってそう口にする。


「でも、そもそも俺がやらかさなかったら香月が“花嫁”扱いされることもなかっただろ?」

「でもそうなったら私は愛良と一緒にこの城山学園には来られなかったし、永人とも出会えなかったってことになるでしょ?」

 私は気にしていないのに、忍野君はいつまでも気にしているみたい。


「もうそのことは気にしてないし、これはこれで良かったんだって思ってるって言ったでしょう? あんまり引きずるなら、一発殴ってチャラってことにしようか?」

 いい加減ウンザリしてきて、拳を作ってそう言った。


「あ、分かった。もう言わない」

 以前永人を殴ったときのことを思い出したんだろう。

 忍野君はすんなりと引いた。


「ぷっ……忍野先輩、それちょっと情けないです。気持ちはわかるけど」

 私達のやり取りを見て愛良がふき出した。

 それにつられるように他の皆も笑いだす。

「まあ、確かにあんな風に吹き飛ばされたくはないよな?」

「そんなに吹き飛んだんですか?」