「そのあたりも承知している。だから前回もう一人の“花嫁”に純血種の血が入ったと聞いたとき、その岸を引き離すことに口出しはしなかったのだ」

 少し苦々しい表情をした彼は「だが」と続ける。

「今はもう血の契約も成された。“唯一”と契約、強固になった二人の間に入ろうとするのは愚かしいとは思わないのか?」

「……そうだな」

「っ!」

 反論していた男までも納得の声を上げたことで俺の思惑通りに事を進めることが出来なくなった。

 聖良が吸血鬼になりたてのとき岸を彼女から引き離そうとした。
 あのときは良くて今は駄目というのは……。

 それほどに血の契約は揺るぎないものという事か。

 自分も吸血鬼だ。
 血の契約の確固たるつながりは理解している。

 だが、何か……どこかに付け入る隙は無いのか?
 あの二人を引き離し、聖良を俺の元に取り戻す方法は……。


「……とはいえ、俺たちがそれを理解し愚かしい行動をとらなくても、いくつかの家の吸血鬼は何かしら動くのではないか?……月原家とかな」

 大学生の孫がいるという老人がうんざりした様子で話す。

「だからと言って我らが同じことをするわけにはいかないだろう? 月原家は本来の吸血鬼の有り様をことごとくないがしろにしている。ある意味、恥さらしの一族だ」

 ……本来の吸血鬼の有り様?