冗談交じりではあるが、やはりそういう話は出てくる。

 だから俺はここぞとばかりに提案してみた。


「彼女の“唯一”である岸永人は違反吸血をしたという前科もあります。そのような相手は相応しくないでしょう? ここは改めて彼女のパートナーを決めた方がよいのでは?」

「……ふむ」

 冗談交じりの会話を止め、俺の言葉に深く考える様子を見せる上層部たち。

 その候補に自分もあげてもらえるよう言葉を重ねようとしたときだった。


「それは、吸血鬼としてまともな行為なのか?」

「っ!」

 上層部の中でも冷静な一人が静かに問いかけてくる。
 その言葉は昨日聞いた朔夜様の言葉と重なった。

『吸血鬼から“唯一”を引き離す行為がまともなわけがないだろう?』

 喉に何かがつっかえたように言葉が出せなくなる。


「吸血鬼にとっての“唯一”がどういうものか、実際に“唯一”を得ていない者たちでも理解しているはずだ」

「……だが、やはり始祖の血は正直欲しい。赤井家は“花嫁”を得たのだからまだいいだろうが、強い吸血鬼を残したいと思うのも我らの性だろう?」

 初めに孫を宛がいたいと口にした初老の男が反論する。
 だが、相手はどこまでも冷静に物事を見ていた。