【完全版】妹が吸血鬼の花嫁になりました。

「……もう大丈夫だな?」

 そうして朔夜さんの手が離れると、嘉輪の困惑した表情が見える。

「今の、何? 愛良ちゃんに私の血をって考えただけで怖くなったんだけど……」

「純血種の血に刻まれた、不死に対する恐怖だ」

「不死に対する恐怖?」


 嘉輪の疑問の声に私も同調する。

 死なないことに対する恐怖なんてあるんだろうか?

 死に対する恐怖って言うのは良く聞くけれど……。


 しかも、今回の場合は自分に起こることじゃない。

 あくまで他人である“花嫁”が不死になるってことでしょう?


 理解出来ない私達に、朔夜さんは静かに淡々と話す。


「正確に言うと、不死者を作り出してしまう恐怖だろうな。始祖が体験したであろう、生き続けることの苦痛が純血種の血に刻み込まれているんだろう」

 だから“花嫁”に血を入れようと考えただけであんな風になってしまうんだって。


「そういうことだから、本来なら“花嫁”に純血種が血を入れるということは起こらないはずだった」

 そうして、今度は私に視線を向ける。


「だが、今回ばかりは色々と事情が違った」

 そうだ。

 私は本当なら“花嫁”じゃあなかった。


「“花嫁”の血筋ではあっても、“花嫁”となるほどの血にはならないはずだった」

 それが、忍野君の存在で(くつがえ)る。