【完全版】妹が吸血鬼の花嫁になりました。

「じゃあなおさら何で⁉」

 さらに驚く嘉輪にそう思うよね、と同意したくなる。


「でも、私が永人の顔面に正拳突きして吹っ飛ばしちゃったのを見て、その辺の恨みみたいなものも吹っ飛んじゃったんだって」

「……そういえばあのとき一人だけ大笑いしてたわね」

 嘉輪の言葉に私もあのときのことを思い出す。

 同じH生にすら異様な目で見られていた鬼塚先輩。
 あれは色々吹っ飛んだ結果だったのかもしれない。


「まあ、それでなぜか逆に構いたくなったんだとか……。永人を気遣ってくれるような人は少ないだろうしって」

「……まあ、鬼塚先輩ってもともと面倒見のいい人だしね……」

 いいのかそれで、と思わなくもないけれど、鬼塚先輩らしいと言えばらしいなと納得する。

 でも構われている本人はうんざりしていた。


「面倒見がいい? 気遣いとかいらねぇし。うぜぇだけだっての」

「……」

 本気で嫌がっている永人を嘉輪はジトーッと見つめる。

「岸……まさかあんた、聖良に会いたいからとか言ってるけど、本当は鬼塚先輩から逃げたいだけなんじゃないの?」

「はぁ⁉ 会いてぇってのも本当だっつーの!」

「……会いたいの“も”、なんだ」

「ぐっ……」

 突っ込まれた永人は二の句が継げなくなっていた。