【完全版】妹が吸血鬼の花嫁になりました。

 何を言って良いのかも分からなくて黙っていると、突然背後から聞き覚えのある声がした。


「まぁーったく。ちょっと離れただけでこんな事になっちゃってー」

 場違いな程明るい声。
 驚いて振り返る前に、声の主は私の腰を引き寄せ体をピッタリとくっつけた。


 んなっ⁉


 声を掛けられるまで全く気配を感じ無かったのにもビックリだったけれど、いきなりこんな風に抱き寄せられた事はもっと驚いた。

 だって仕方ないでしょ。
 ちっちゃい子供の頃は別として、男の子とこんなに近付いた事なんて無いんだから!

 金魚の様に口をパクパクさせて、私は隣の俊君を見上げる。

 頭の片隅の冷静な部分で、私今アホみたいな顔してるだろうなぁと思いつつ、同時に叫びたい心境だった。


 何で俊君がここに⁉
 いや、それよりもどうして私を抱き寄せたの⁉


 その疑問を口にしたいのに、驚きすぎて声が出ない。

 そんな私を見る事もせず、俊君は人を食った様な笑顔で鈴木君に視線を向けていた。


「邪魔しちゃってスミマセン。でも聖良先輩には決まった人がいるので、告白とかしても無駄ですよ?」

 これまた何を言っているのか。


 私、別に決まった人なんていないんだけど?
 それどころか彼氏いない歴=年齢なんだけど⁉


 もはや何処から突っ込めば良いのか分からない。