まさかそのために一番最初の吸血を直接吸血させたんじゃないでしょうね⁉


 ニヤニヤと意地の悪い笑みを浮かべる永人を見ていると、そんな疑いさえ抱いてしまいたくなる。

 それほどに永人の血を直接飲むということは魅力的な誘いになっていた。


 で、でもここで今言うわけには……。


「……あのさ、お前ら俺のこと忘れてないか?」

 色々と葛藤していると、忍野君がためらいがちに声を上げる。

 すると永人の表情が一気に不機嫌なものに変わり、「チッ」と舌打ちが聞こえた。


「邪魔すんじゃねぇよ。また蹴られてぇのか?」

「こっわ! 香月、お前の彼氏マジ怖いんだけど⁉」

「あー、えっと……とりあえずごめん」

 永人の態度と、事実彼の存在を忘れかけていた事への謝罪をする。

 あえて何に対する謝罪かは言わないでおいた。


「怖いし目の前でイチャつかれるし……いいよ、俺次からは一緒に血液パック飲もうなんて誘わないから」

 そう言って不貞腐れた忍野君は、最後に「俺も“唯一”に出会いたいなぁ……」なんて呟いていた。