恥ずかしくて、永人のニヤニヤが腹立たしくて。
 いっそ殴ってやりたい表情だけれど、そんなことしたら後悔するのは目に見えてるし。


 ちょっと痛い目にあえばいいと思って彼の顔面を殴ってぶっ飛ばしてしまったことは記憶に新しい。

 力加減出来ればいいんだけれど、その辺りはまだ私はうまく出来ない。


 いくらイラっとしたとしても、好きな人をぶっ飛ばすほど殴りたいわけじゃないから……。

 だから、結局私は永人の手を振り払うことも出来ず顔を赤くしてプルプル震えることしか出来なかった。


「俺の血の味、覚えてんだろ? 直接飲みてぇんじゃねぇか?」

「んな⁉」

 私が黙っているのをいいことに、永人は更に誘いをかけてくる。


 確かに永人の血は美味しかったし、直接吸血ですむならそれが一番いい気もする。

 でもそれは、永人が発情しなかったらの話だ。

 この間みたいになるのは……ホント、もうちょっと私の心の準備が出来てからにしたい。


「俺はいつでもいいんだぜぇ? 俺はお前のものだし? お前が一言『欲しい』って言えばいいだけだ」

「そ、そんなの言えるわけ――」

「言いたくなるさ。“唯一”の血の味を覚えちまってるからなぁ?」

「ぅぐっ」

 その通り過ぎて言葉が出てこない。