【完全版】妹が吸血鬼の花嫁になりました。

「え? ちょっ、永人ストッ――ひゃあ⁉」

 止まる様命じる前に、耳のふちを舐められて変な声が出てしまう。


「ほ、ホントにやめっ――はぅっ」

 そして今度ははむっと食べられてしまった。


 このままじゃ本当にマズイ!
 人前でこんなこと……。


 恥ずかしすぎて、何とかしなきゃと周囲に意識を向ける。

 そうして嘉輪と目が合った。


 でも、彼女の私を見る目は何故だかとても生暖かいもので……。

「か、嘉輪?」

 助けを求める前に名を呼んでみると、どうしてかニッコリ笑顔を向けられた。


「“唯一”と仲が良いのは良いことだわ。邪魔者は退散するから、ごゆっくり」

「え?」

「ほら、鏡も行くわよ」

 と、嘉輪はもう一人残っている瑠希ちゃんにも声を掛ける。


「え? 良いんですか? 聖良先輩、助けを求めてる気がしますけど……」

 瑠希ちゃんは私の思いを汲み取ってそう言ってくれる。

 けれど、嘉輪はニッコリ笑顔のまま続けた。


「“唯一”同士のイチャイチャを邪魔することほど馬鹿らしいことはないわ」

 達観したような眼差しと口調には何とも言えない説得力があった。

 何だろう。
 この手の対応は慣れているといった感じ。


「それに聖良なら本当に嫌なときは命令して止められるでしょう?」