【完全版】妹が吸血鬼の花嫁になりました。

 久しぶりに大声で言い返してしまう。

 そしてそれは零士も同じだったのか、そのケンカ買ってやるとでも言いそうな勢いで言い返された。


 でも、そのケンカはすぐに邪魔が入る。

 後ろから腕が伸びてきて抱き込むように零士と引き離された。

「え? 何? 永人?」

 突然の行動に戸惑っていると、僅かに不機嫌そうな声が耳の後ろから掛けられる。


「他の男と仲良くしゃべってんじゃねぇよ」

 明らかな嫉妬に満ちた声に私は更に戸惑った。


「え? ええ? ケンカしてたんだよ? 仲良くなんて絶対してない!」

「そうだ、なんでこいつと仲良くしてるように見られなきゃならねぇんだ? 虫唾(むしず)が走る」

「それはこっちのセリフよ!」

 思わず言い返すと、今度は愛良が零士の袖をキュッと握った。

「……ケンカしてるってのは分かるんですけど、でもそれが仲良く見えちゃうんです。……だから、その……嫉妬しちゃうのでほどほどにして欲しい、です……」

 少し視線をそらしながらそう言う愛良は姉の目から見ても可愛い。
 零士から見たら尚更だったんだろう。

 一気に毒気を抜かれたような顔になり、愛良に向き直った。


「仲良くなんかしてねぇけど……でも、嫉妬してくれたのか? 愛良」