【完全版】妹が吸血鬼の花嫁になりました。

 本心を悟られないかちょっと心配だったけど、杞憂だった様だ。


「はーい。分かりましたよ」

 と、ヒラヒラと手を振って送り出してくれた。


 こうして何とか一人、この場を離れる事に成功する。

 一先ず廊下に出た私は、さてどうしようかと考える。

 離れたいと思って廊下まで出て来たけれど、どこか行きたい場所があるわけじゃない。

 でも廊下をウロチョロしてたら気付かれそうだし……。


 仕方ない。
 取り敢えずトイレに行こうか。


 そうすれば嘘を言った事にはならないだろうし。

 って事でトイレ前に行ったはいいけれど、もよおしてるわけでも無いので入る気にはなれない。

「…………」


 とりあえず人が少ない所に行きたいなぁ。

 教室からあんまり離れてなくて、人気のない所ってどこかあったっけ?


 そう思いながら当てもなく歩き始めると。

「あの、香月さん」

 男の声に呼び止められた。

 振り向くと、そこには見知った顔の男子生徒。
 とは言え、本当に知っているという程度で話した事はあまり無い。

 去年同じクラスだったけれど、それ以外に関わりは無い相手。


 何だろう?
 先生に言付けでも頼まれたとか?
 でもそれなら同じクラスの人に頼むよね?


「何? 鈴木君」

 不思議に思いながら彼の名を呼んだ。