そんな私達の雰囲気をぶち壊すかのように大きく唸る声が聞こえる。

 それにハッとする私と愛良。

 見ると、唸り声の主は眉間にくっきりとしわを寄せた田神先生だった。


 うっ……気まずい……。


「とにかく、これで愛良さんの血婚の儀式は終了だ。零士との確かな繋がりが出来た以上、今後愛良さんを無理に手に入れようとする輩はいなくなるはずだ」

 淡々と“先生”の顔でそう告げた田神先生は、私に視線を移してスッとその眼差しから感情を消す。

「……だが、聖良さんの場合は少々特殊なので何とも言えない。岸と引き離すことは出来なくなったが、それだけとも言える」

「それは、どういう意味ですか?」

「“花嫁”に純血種の血が入ったんだ。前例のない事態のため、特定の相手がいたとしても狙ってくる輩はいるかもしれないということだ」

「……」

 冷たくも見えるその眼差しに、田神先生もまた私を諦めていないと言っているようで苦しくなってくる。

 主従の儀式をしたことで離れ離れにされそうだった永人と私は一緒にいることが出来るようになった。

 吸血鬼としての血に対する誇り。

 その血に刻まれた(あらが)いようのない誇りゆえに、吸血鬼は血で結ばれた私達を引き離すことができない。