真っ赤なルビーの様な結晶に、愛良が軽く指を切って血を付ける。

 すると結晶は形を変えて、棒状になったかと思うと愛良の左手首に巻きついた。

 ピッタリと肌にくっ付く様に巻き付いたそれは、継ぎ目も無く愛良の手首にはまる。


 その不思議な光景を私は軽い驚きを持って見ていた。


「……愛良、これでお前は俺から絶対に離れられない」

 零士が愛良を見つめ、嬉しそうに俺様な雰囲気の笑みを見せる。


 私から見たらただのムカつく笑顔だけど、愛良にとっては嬉しいものだったらしい。


「望むところです。零士先輩も、私から離れちゃ嫌ですよ?」

 零士に対抗するようにニッと笑った愛良を零士は思わずという風に抱きしめた。


「……なぁ?」

 愛良の血婚の儀式を見届ける私に隣から声が掛けられる。


「見届けたならもういいだろ? 他人のイチャイチャなんか見せつけられたくねぇんだけど」

「……それはまあ、私も複雑な心境になるけれど……」

 私の髪の毛をひと房取ってもてあそぶ永人は、口角を上げてその髪に軽く唇を落とす。


「他人の見るくらいなら、俺らでイチャつきてぇんだけど?」

「なっ⁉」

 とんでもない誘いに私の心臓は大きく跳ねる。

 嫌、ではない。

 でも、人前でするようなことじゃない。