マジで痛かった……。

 鼻のあたりを押さえながら思う。

 腫れも引いて、殴られた形跡が見られないくらいもとに戻っているが……。
 実は鼻の骨が折れていたとは言えない。


 あいつのすべてを俺が奪ってやると思っていたが、あれだけ強くなったんじゃあ逆に奪われそうだな。

 苦笑いを浮かべたが、それも悪くないかもしれないと思う。

 聖良が俺以外の誰かのものになるなんて考えられない。
 あいつに男が近づいただけで狂おしいほどに嫉妬する。

 でも、俺があいつのものになればそんな嫉妬もどうでも良くなるんじゃないかと、儀式を終えた今なら思う。


 俺が聖良を独占するんじゃなく、聖良が俺を独占する。

 それはある意味、とても気分が良かった。

 聖良が俺を独占したいと思うなら、俺はただあいつの近くにいればいいだけ。
 聖良が他の誰も見ないように、そばに引っ付いていればいいだけだ。


 想っても、返されることのないものだと思っていた。

 だが、聖良は同じ想いを返してくれた。

 それがどれほど嬉しかったか、あいつは知らないだろう。


 あれだけ大事に思っている妹と離れることになっても、俺を選んでくれた。

 他の何と引き換えにしても、俺を選んでくれた。


 そんな聖良を……俺は全てを掛けて守ろうと思った。

 ――なのに。